※ネタバレを含みます。未視聴の方はご注意下さい。



一組目: 幽天パラダイス

キャラクター:8
流れ:5
構成:5
笑い:6
世界観:7

81点

ひと組目の変化球は点数の付け方に迷いました。
とにかく幽香と天子のキャラクターが強烈なので、それだけでドリーム感があります。
バトルゲーム風のつかみから、ファンへの対応の練習というネタへの流れ。
強引なネタ運びもSMキャラ同士ならではでしょうか。
SとMの対応を順番に見せていくダブルボケはなかなか新鮮です。
ただ、ダブルボケにするなら幽香と天子それぞれもっと極端にSMを見せ合ってもよかったのではないかな、と思います。
「馬鹿じゃねぇの!?」「もっと」
は笑いました。
そこから今流行らしい「百合」というネタへ。花繋がりではりますが、やはり唐突には感じてしまいます。
幽香「めしべとめしべ」
天子「ここでやってみせようか?」
この二人の台詞に代表されるような狂った世界観はちょっと好きです。
二人でGLを実践して見せて「どうですか?」と声を揃える。観客側は「いったい自分たちはなにを見せられているのか?」というシュールな笑いに誘われます。
全体的通しての印象は、キャラは濃いけれど笑いの振れ幅は狭いかなという感じでした。
というのも「ファンへの対応」も「百合」も順を追って言動がエスカレートしていく方式を取っていながら、その頂点がそれほど過激ではないのです。
せっかく二人のポテンシャルがあるのだから、もっと冒険してもよかったのでは?
それこそ幽香と天子、それぞれが理想のS的対応とM的対応を押しつけ合い、極限まで真反対の対応を見せつけて欲しかった。
この二人がコンビを組んだことは奇跡だと思っています。是非、それぞれのキャラクター性が存分に発揮できるようなネタ作りに取り組んで欲しいです。



二組目: 酔いどれ巫女ッchu!☆

キャラクター:5
流れ:4
構成:4
笑い:3
世界観:6

72点

人が多いとやりづらい→普段は少ないから、という掴みがすでに弱いと感じました。
そこから萃香が妖怪オリンピックで選手宣誓をすることになった、という提起へ。続く妖怪オリンピックの競技紹介。申し訳ないですが、競技内容のボケは、悪い意味で奇抜すぎてイメージがわきにくかった。序盤で流れが失速してしまったのが厳しい。
そして、選手宣誓は一人ではなくコンビでやると明かされます。今からリハーサルをしたいという流れへ。
選手宣誓の練習という漫才は、本来古典的で一定の面白さが約束されるフォーマットのはずでしたが、冒険の方向性を間違えてしまったかな……。
よく分からない選手宣誓に付き合わされて、よく分からない言動を要求されるという霊夢の役割。
ここでの霊夢はツッコみというようりも萃香のロボットです。
ロボットに徹した挙げ句、最後は切り捨てられるという、理不尽な笑いを狙ったのであろうオチ。
漫才と言うよりも漫才風メタを含んだコントのように見えます。
狙い所は理解できるものの、このような、言動のシュールさで笑わせるネタは、大会向きではなかったかもしれません。
もっとわかりやすく、二人のやり取りで笑わせるような漫才が見たかった。
萃香、霊夢、ともに力のある者同士が組んだコンビだっただけに残念です。二人の良さが見事に相殺された印象が残りました。



三組目: みこころ一家

キャラクター:10
流れ:8
構成:7
笑い:9
世界観:7

91点

「生まれ変わったらなにになりたいか」→「そればっかり考えてる」で掴みはばっちり。
こころのキャラクターが素晴らしいです。
「見て見て、反吐が出た」
神子のぶりっこに対する追い討ちもすごい。
表情が豊かなこいしになりたい→表情の勉強→グルメレポーターの練習という流れへ。
「まずすぎるぞお前」
正直者のこころに嘘をつくことを教える神子。
嘘をついて金をもらえると目を輝かせるこころの調子の良さが笑える。「食いついた!?」という神子のツッコみもナイスです。
「20万」 「寅丸星の年収」 「ウルトラマンのお面」
「30万」 「阿求の年収」 「仮面ライダーのお面」
「40万」 「孫正義の月収」 「ムジュラのお面」
「50万」 「明治政府の国家予算」 「石仮面」
こころのボケのチョイスがセンスに満ちあふれています。
金額が増えるにしたがって段階的にこころのリアクションが過激になっていくのが本当に楽しかったです。
欲に正直な躁鬱の激しいこころのキャラクターと、それを見事に制御する神子のキャラクターの相性が抜群。
是非二本目が見たいコンビです。



四組目: 鳥獣喜楽

キャラクター:8
流れ:8
構成:7
笑い:8
世界観:6

87点

「やまびこは文化が!」の掴みは置いておいても、すぐに本題の間違い探しにいったのはテンポが良かったです。
「私を使ってやってみよう」
という運び方もスムーズ。ボケがわかりやすくて良い。
響子がボケで話の主導権を握りつつ、みすちーがしっかりツッコみを入れていく。それぞれキャラクターが立っていて、綺麗に役割分担ができています。
みすちーの「へたくそか!」のツッコミが可愛らしい。根の真面目なキャラクターが振り回されて本気で困っているという感じが楽しい。
ポーズ→動き→歌、とオーソドックスな進行ですが、徐々に過激化していく手順はしっかり踏んでいる。
新鮮さは少ないものの、このコンビはきっちり正しい漫才で、安心して見ていられました。
滞りなく最後まで自然な流れの中で漫才を楽しむことができました。
地力が非常に高いコンビに見えます。漫才の節々に二人の実直さが垣間見えて、無条件で応援したくなりました。有望なのは間違いなし。



敗者復活: アマノジャック!

キャラクター:8
流れ:7
構成:5
笑い:6
世界観:8

84点

「死刑宣告」 「無礼講」 「下克上」 「画面をもどして!」
冒頭からキャラクターと世界観が全開で、がっちり心を掴まれました。
「動物の森をやりながら」というジャブを効かせながら、ネタは暗殺の練習という漫才コントへ。
外の世界ならギリギリアウトかもしれませんが、幻想郷内の大会なので、こういう攻撃的な姿勢はむしろ評価したいです。
ただ、どうせやるなら徹底して欲しかったのが正直なところ。
正邪がエライ人を暗殺するコント→ぬえが 「完璧やな」 「100点」 「プロやな」 と褒めるパターンが三回続きます。
正邪がボケでぬえがツッコみの役割なのですが、ここは反転してもよかったのではないでしょうか。
正邪がドヤ顔でやり遂げた暗殺に対して、ぬえが 「それではぬるい」 とダメ出しをする、……冒頭から過激なキャラを演じてきた正邪よりも実はぬえの方が鬼畜だった、……というような。
実際、正邪の提示する暗殺ボケは類型的で過激さに欠けます。
ぬえが褒めて閉じてしまうことで、話に広がりが生まれずもったいないと感じました。
冒頭で過激な世界観を提示したからには、極限まで突き詰めて、やりきって欲しかった。
オチに向かってどんどん尻すぼみになっていくのは残念でした。
この漫才、正邪の魅力が出やすい形だと思います。正邪の才能をきっちり笑いへ昇華させることができるのは、本物のぬえだけなのでしょう。はしゃぐ正邪の姿にはぬえへの信頼感も現れていたと思います。こんどは是非、本物のぬえと組んで、全力全開の芸を見せて欲しい。



最終決戦一組目: みこころ一家

キャラクター:10
流れ:9
構成:7
笑い:10
世界観:8

94点

「ひとりでテレビを見る」 「体育座り」 というブラックな掴みはさすがです。
引きこもりはダメ→寺子屋に体験入学という流れもスムーズ。
「まてよ」と疑心暗鬼に陥るこころのキャラクターがすばらしい。
「我々が分裂する~」 「里の犬」
といった言葉のチョイスも見事。こころの反応を的確に処理する神子の力量にも感服します。
「うかうか気分」という単語にひっかかるこころが面白い。
「なんだうかうかって?」→「新種の妖怪か?」→「そうだ! うかうかに餌をやらなければ」
このくだりの破壊力がすごい。
神子のダジャレに対して、「なんであんなことを言うのだろうか? 恥ずかしくはないのだろうか?」毒気のある言葉のチョイスがいちいち面白い。
「先生は我々のことを獅子だと思っているのだろうか?」→「先生の顔を立てるために獅子のフリをしなければならない」
こころの思考回路が異常すぎてすばらしいです。
そうして放送部が授業中にべらべら実況するというコントへ。
こころは漫談でもやっていけそう。言葉のチョイスはさすが。
極めつけが「速報。チルノ脳挫傷で死亡」
全体通してこのコンビは、箇条書きのように羅列される笑いひとつひとつの鮮度が高く、ずっと見ていても飽きない。
本当はもっと長いコントを漫才用にアレンジしたのかな?という印象。
だからでしょうか、オチの「このあとは職員室密着24時」は強制終了感が半端なかった。
漫才冒頭の問題提起とオチが微妙にリンクしてないのは一本目と同じ。もしかするとこのコンビが真に才能を発揮するのはコントなのかも。
漫才の大会なのでせめて漫才に帰ってきてからオチをつけて欲しいと感じるのは、さすがに欲しがりすぎか。コントが見たくなるコンビとしては今大会随一。



最終決戦二組目: 鳥獣喜楽

キャラクター:8
流れ:10
構成:10
笑い:10
世界観:8

96点

みすちーの 「アオダイショウって結構でかいよ。……でかいよ、じゃないよ馬鹿ぁ!!」 によって決戦は鳥獣喜楽を推すことを決めました。
最終決戦は、図らずも漫才コントと正統派漫才の対決という構図になりましたが、正統派漫才の底力が見えて感無量です。
冒頭部分、一本目の自分のネタと過去の他人のネタをフリにするという貪欲さはすばらしい。一本目のネタをフリにするのは賛否あるようですが、個人的には擁護派です。
生まれ変わったら鳥になりたい。からの、鳥人間コンテストに出たいという流れ。
ここのみすちーの説明ツッコみが上手くて、鳥が人間に交じってコンテストに参加している情景が浮かんできて笑える。そしてくりだされるツッコみ 「優勝するじゃん!」 が絶妙です。
鳥がだめなら間を取って鳥人間とネタは流れます。外の世界のm-1王者笑い飯の持ちネタ『鳥人』を彷彿とさせますね。おそらく『鳥人』は参考にしたのでしょう。独特な形式の『鳥人』というネタを、ボケツッコみというオーソドックスな形で再構成することで、二人の良さが出る形にもっていけていると思います。奇抜なネタを正統派漫才でやり直すという姿勢、ここにも二人の生真面目なキャラクター性が見えます。
美少女コンテスト、大食いコンテスト、鳥人間コンテスト、どうして鳥人間だけ鳥人間コンテストに出てはいけないのかと食い下がる響子。このへりくつたまりません。
みすちーの 「マスコミが大騒ぎします!」 「世間は鳥人間に優しくない!」 ツッコみ上手です。
「猫人間コンテスト」
「蛇人間コンテスト」
とネタは進み、
「蛇と下半身じゃん!」 みすちーのツッコみが癖になります。
「脱皮のうまさを競い合う」 というボケの発想もすばらしくて、 「脱皮したらチ○コ丸出し」 「テレビ東京なら」 とやり取りでどんどん面白くなっていく。
響子の 「じゃあチ○コを蛇にしたらいいんじゃないの?」 がひどすぎて、さらにみすちーの 「馬鹿じゃねぇの」 が共感できすぎて笑えます。
「アオダイショウ」 のアッパーカットが決まった後は、ほぼ勝ち確の消化試合の気持ちで見守っていました。
「馬人間コンテスト」 での 「へらへらすんな!」 「死んでしまえもう!」 「気が変になるもう!」 みすちーのたたみかけがあり、 「ダメ人間」 という綺麗な着地。
全体通して、すごく完成度が高いネタだったと思います。みすちーのツッコみは本気で上手いと感じます。
真面目そうな二人が馬鹿なことを言い合ってときどき照れ笑いを見せる様子もまた楽しかったです。
一本目と二本目のネタ順が正解。この二人の躍進が嬉しくてたまりません。みすちーのファンになって10年ほど……嬉しさのあまり泣きそうになりました。これからも頑張って欲しいです。

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