※ネタバレを含みます。未視聴の方はご注意下さい。 



1組目:わらふぢなるお

サポートセンターのオペレーターが変な人、というネタ。
「お客様ー」三連発の掴みはナイス。
ただ、直後「今日で仕事やめるから、滅茶苦茶やってやろうと思ってる」は絶対にない方がいいと思います。ここで、オペレーターを「変な人」から「ふざけてる人」に格下げするメリットはこのコントでは皆無。せっかく笑える後半部分がぐっと目減りして見えます。
キーボードめちゃくちゃに叩く。
エリーゼのためにのミレミレが多すぎる。
「僕はぶくぶく太った豚」「どっから見てんだよ」
など、小ネタが面白いだけにもったいないと感じました。
「僕はぶくぶく太った豚」の部分って、もしかして「bbbb」から被せるの忘れたんじゃないかしら?

キャラクター:5
流れ:6
構成:5
笑い:6
世界:6

78点



2組目:ジャングルポケット

エレベーターで早く上にいきたいのに、修羅場が展開されてなかなか上にいけない、というネタ。
「ちょっと待ったー」の天丼からの、修羅場に移行する流れが見事。
はっきり、完成度がむちゃくちゃ高いコント。
早く上に行きたい斉藤という立場と、修羅場を展開する太田、武山のバランスが絶妙。
「誤解していることが10個ある」「長くなりそうだ」
ここのボケと説明ツッコミ素晴らしい。
斉藤側がだんだん興味を持ってしまう、という逆転、さらに「結婚」→「姉弟」→「男同士」というエスカレーションが見事。
「僕も上なんです」というオチは、①「だったら最初からエレベーター内でやれよ」と②「きまずい」の二重の意味で面白い。
個人的には①を最後にツッコんで終わる方が好き。

キャラクター:8
流れ:9
構成:8
笑い:8
世界:6

89点



3組目:かまいたち

吉田さんに告白されている、とみせかけて、告白される練習、とみせかけて、それを覗こうとしている目撃者を撃退する練習をする、謎の男のネタ。
前半の吉田さんに告白される練習が、後半の裏切りへのフリ。
前半は丸々フリなのに、単体でおもしろい。
「ちょっと座って話しませんか?」の言い方を悩む男に、木陰からツッコミを入れる男。
両者の関係性が、動画と視聴者の関係と重なり、観客を楽しませてくれます。
そこで、「さっきから見ている」と急にボケ側から言われると、ツッコミと一緒に観客側もドキッとできるからくり。
実はこうでした、と逆転を連続させることで笑いを増幅させる。裏切りの気持ちよいコントでした。

キャラクター:7
流れ:8
構成:7
笑い:8
世界:7

87点



4組目:アンガールズ

ナンパしにきたガリガリコンビ、失敗し荷物を取られた相方を慰める、というネタ。
ガリガリコンビがナンパをしにきた、という出オチなんですよね……。
荷物を取られる→電車に乗れない→お金貸してあげる→でも乳首隠さないと
ここの流れはどうしても弱く感じます。「お金貸してあげる」という部分は、てっきり「荷物取られたこと自体が、電車賃をだまし取るための嘘だった」と展開していくのかと思いました。
このゆるい感じがアンガールズの良さかもしれませんが、もうちょっと展開が欲しいと思ってしまいます。

キャラクター:6
流れ:4
構成:4
笑い:4
世界:6

74点



5組目:パーパー

卒業式マジックを期待する男子と、他の男子のボタンを欲しがる女子のやりとりネタ。
言い回しの妙は確かに面白いです。
しかし、
卒業式マジックを期待する→女子が話しかけてくる→本当は別の男子のボタンが欲しい
という展開がありきたりすぎて、だれます。
結果、「マルチ商法的にキスをする提案」という部分がピークなのに、そこに持って行くまでに失速しまい、おもしろさ半減。
これ、「ボタンを欲しがる女子が卒業式マジックを期待する男子に話しかける」という導入部分を「キスを欲しがる男子がボタンを欲しがる女子に交渉にやってくる」という逆の展開で、「マルチ商法」を掴みにするぐらいで練り直した方が、より爆発力のあるネタになるんじゃないかなぁ。
ボケに狂人性が足りないと感じてしまいました。

キャラクター:5
流れ:4
構成:3
笑い:4
世界:6

72点



6組目:さらば青春の光

頼んでいない注文を出して購買意欲を煽る、居酒屋のネタ。
日常から異常へのエスカレーションが上手い。本当に構成が強いコンビだと思います。
「ライブ感で煽ってきてる」という説明ツッコミのワードチョイスもセンスを感じます。
「借りますね」を頂点にして、オチを「また来る」にしたのは、気持ちが良いです。このコント、オチのバランスがむちゃくちゃ難しいはずなのに、見事だと思います。

キャラクター:8
流れ:8
構成:9
笑い:8
世界:6

89点



7組目:にゃんこスター

初っ端の「縄跳び大好き少年」の破壊力が高すぎて、そこから始まる「リズム縄跳び」の世界観が狂っている。
サビで縄跳びを捨てて不思議な動きA→不思議な動きAを期待する→伝説の縄跳びも捨てて不思議な動きA→不思議な動きBが現れ、不思議な動きAをおびやかす
むちゃくちゃなようで、実は構成しっかりしてるというところは、一応言及しておきます。

キャラクター:10
流れ:8
構成:7
笑い:9
世界:9

93点



8組目:アキナ

休憩室にて、怖い青年がエピソードを重ねるというネタ。
怖さと笑いって実は一緒なのだろうか、と考えさせられるコント。
並列的にネタを繋げると冗長になりやすいが、怖さのエスカレーションを暗転で補うアイデアで見事にクリアしていると思います。
「ピーターパンは焼いたら食べられる」がなかなかの破壊力。
すごく好きです。

キャラクター:9
流れ:7
構成:7
笑い:8
世界:7

88点



9組目:GAG少年楽団

恋路が進むのが遅すぎる幼馴染みのネタ。
ラブコメをずっとやっている更年期というギャップが面白いです。
「趣味も仕事も最終ステージ」
「焦げていく特上ハラミの気持ち」
言葉のチョイスがナイス。
しかし、ラブコメをやっている更年期という設定の面白さが要なので、展開自体は後半尻すぼみに感じました。
ラストになにかひとつ裏切りがあれば、印象が変わったかも。

キャラクター:8
流れ:7
構成:6
笑い:6
世界:6

83点



10組目:ゾフィー

出て行った母のことを飯と認識している息子、たしなめる父のネタ。
非常によくできた無難なコントだと思います。
母がいなくなった→「飯ねーじゃん」→母=「飯作る人」→ケータイに「飯」と登録している
展開自体は面白いし、台詞の並べ方ひとつとっても、ネタ作りに慣れているという職人技を感じさせます。
しかし、どうしても「母を飯呼ばわりする」という「息子のおかしさ(ボケの異常性)」自体が弱いので、置きにいった印象が残ってしまいました。
正統派コントがキングオブコントで取りづらいというのは、エレキコミック(2010)の時点で証明済み。ネタの根幹部分の弱さは型では補いきれない。

キャラクター:6
流れ:5
構成:7
笑い:6
世界:5

79点



最終決戦1組目:アンガールズ

妻の元恋人と名乗る男が自身の存在を主張する、というネタ。
ストーカー現る→妻の元恋人→妻ではなく夫をストーキングする→夫の浮気を押さえたい→しかし夫は真面目で浮気しない→貯金尽きてストーカーやめる
展開が面白いです。ボケ側が哀愁を帯びた笑いを誘うセンスは好きですが、どうしてもオチは弱く感じてしまう。

キャラクター:6
流れ:5
構成:7
笑い:6
世界:6

80点



最終決戦2組目:ジャングルポケット

組織の殺し屋とボスが変、というネタ。
ガシャーンが痛いからやめて欲しいという部分が、もう少しウケてくれればよかった。
音に反応して「やーめーろー」というボス。なぜかクローゼットに叩きつけることにこだわる殺し屋。
キャラが立っている割に、音に反応する部分が徹底されていないのは惜しいです。

キャラクター:7
流れ:6
構成:7
笑い:7
世界:6

83点



最終決戦3組目:さらば青春の光

パワースポットの傍で10年バイトしている警備員が幸薄い、というネタ。
ツッコミのタイミング「パワースポットですよね?」が非常に秀逸。
「すいません、触らんといてください」の台詞も絶妙。
パワースポットで一番見せられない画に向かってのエスカレーションが見事。落とし方も堅いと思います。
最終決戦5つのコントだけの純粋な比較ならば、完成度の高さとボケツッコミのバランスの良さで、このネタを推したいです。

キャラクター:9
流れ:8
構成:9
笑い:8
世界:6

90点



最終決戦4組目:かまいたち

ぴっちぴちのウェットスーツを大の大人二人が頑張って脱がそうとする、というネタ。。
二人とも目的は一緒なのに噛み合わない、というリアルな笑いは、コント的というよりも映画的。このバランスがとても楽しいです。
「見た目のウェットスーツの部分減らしたいんちゃうで!」ここをさらりと流さずに、がっつり笑い待ちを取ったのが絶妙でした。
「目処が立ってんねん」の後もなおしつこく脱がそうとする店員の異常性、暴力性からの理不尽な笑い。一本の作品として非常に楽しんで見ることができました。

キャラクター:6
流れ:8
構成:7
笑い:9
世界:6

86点



最終決戦5組目:にゃんこスター

構造が同じネタなので、一本目よりも劣って見える項目を減点することしかできない。
これって、100点満点採点の審査方式の弊害だと思います。

キャラクター:10
流れ:7
構成:7
笑い:8
世界:9

91点



☆採点方式について、仮想審査員Aの本音

コントの王者を決めるキングオブコントにおいて、現在の5人各々100点持ち審査方式は向かないんじゃないなか、とどうしても思ってしまいます。
なぜなら、5人で500点満点は審査員一人の点数配分が重すぎる。ひとり大きく点差付けてたら、それで決まってしまうというのは、公平性を欠く。ひとりの審査員に好かれるか否かで全体の評価が左右されてしまう現状は、自由度が高いと銘打つコントの大会としてはいかがと思う。もし『コント』という型が明確にあって、型の範囲内での笑いについて審査するのであれば話は別ですが……。
もし複数審査員による合計点方式にこだわるのであれば、上下カットシステムは必要だと思います。
すなわち、7人各々100点持ちで採点終了後、最高点と最低点を省いた5人の合計点を、正式な得点とする、というシステム。

私は、第2回~第6回の芸人100人各々10点持ち審査方式(フィギュア方式)の方が、その場の空気を反映しやすいという点で、優れていると思います。
コントって、漫才以上に、好み、ライブ感、その場の空気で、同じネタでも面白さがかなり上下すると思う。
それゆえ、コントそのものの出来映えにくわえて、「どのネタに優勝して欲しいか」という観客視点の審査員各々の感情を得点に反映し、かつ公平性を保つフィギュア方式はかなり優秀。
この審査方式の場合、大会別の合計点を競い合うのはナンセンス。過去最高得点とか意味ないです。その審査時に、優勝して欲しいと思った人がどれだけいたか、という指数が、総合得点なのだから。


もしフィギュア方式なら、下のように点数入れします。

1組目:わらふじなるお
基準点、この点数以外無い
5点

2組目:ジャングルポケット
わらふじとの純粋比較
7点

3組目:かまいたち
空気の判断を他審査員にまかせるため、ジャンポケと同点
7点

4組目:アンガールズ
わらふじと比較
4点

5組目:パーパー
わらふじと比較
4点

6組目:さらば青春の光
わらふじとジャンポケに2点差をつけたことから
8点

7組目:にゃんこスター
絶対に最終決戦に上げたいゆえ
9点

8組目:アキナ
ジャンポケと同点にして様子見
7点

9組目:GAG少年楽団
わらふじと比較
5点

10組目:ゾフィー
わらふじと比較。1点上げたのは構成が上手いため
6点

最終決戦1組目:アンガールズ
最終決戦の基準点。この点数以外無い
5点

最終決戦2組目:ジャングルポケット
一本目より落ちていることの印象点。アンガとの比較
6点

最終決戦3組目:さらば青春の光
アンガとジャンポケとの比較
8点

最終決戦4組目:かまいたち
直前に付けたさらばとの比較。私の中ではさらば優勢
7点

最終決戦5組目:にゃんこスター
ここの点数は、そのとき最高点のネタと純粋にどっちを優勝させたいかだけ
7点



☆総括
自由度の高い別々のコントに100点満点の点数付けるのはすごく難しかったです。バナナマンさん、さまぁ~ずさん、松本さんには頭が下がる思い。
フィギュア方式の優秀さをあらためて認識した大会でした。
にゃんこスターの発掘は、今大会最大の功績だと思います。にゃんこスターには、二本目でも縄跳びやって欲しかった。






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