※ネタバレ及び主観・憶測・妄想を含みます。未視聴の方はご注意下さい。 



一組目: ゆにばーす

キャラクター:8
流れ:7
構成:8
笑い:7
世界観:7

87点

トップバッターからむちゃくちゃよかったです。
「吉本入ってよかった」→「泊まりの仕事」→「ブラック企業」→「思春期か」→「3-4人付き合ったことある」→「3人か4人か覚えておけ」→「0-1人」→「もっと覚えといて」
という掴みから、ビジネスホテルのコントに入るくだりが綺麗。
フリーダムなボケに冷静なつっこみをいれる。ツッコミの間とワードチョイスがかなりハイレベル。ボケの破壊力とのバランスが絶妙に感じられました。
「こんな戦争は嫌だ。どんなの?」の破壊力
「翼の折れたエンジェル♪」でがっつり溜めた上での「ベランダ寒っ」
「がんばれー! わたしー!」「さっきからここ一階やぞ」
漫才コントの性質上生じる「ボケの羅列→だれる」という欠点を、ひとつひとつのボケツッコミの精度を高めることで解消している。見事なネタだと思いました。
オチは、コントの中ではなく漫才部分にもどってきてからの方が綺麗に見える、という好みはありますが、歴代M-1のトップバッター最高水準であることは間違いないと思います。
フリーダムすぎるボケに的確なツッコミという男女コンビは南海キャンディーズを彷彿とさせます。南海キャンディーズのツッコミのワードセンスと膨らませる力は素晴らしいですが、ときおり「こうツッコミをしたいがためのボケ」というような不自然さが露呈します。ネタ構成と緩急バランス、ツッコミとボケの関係性が自然に保てている、という点では、ゆにばーすが上だと感じました。



二組目: カミナリ

キャラクター:6
流れ:6
構成:6
笑い:7
世界観:6

81点

いちばん強い動物は何か、というお題で展開する漫才。
バトルフィールドを勝手に決めるボケはおもしろいです。
海→崖→街、という展開は綺麗。しかしながら、反転部分が「知恵を使う」→「クマ可哀想」→「知恵を使っているのは動物博士だけ」という頂点は爆発力に欠けて見えました。「クマ可哀想」という部分で肩すかしを食らった感じがしてしまいました。
これ、オチを「モグラ」にするなら、「バトルフィールドを土の中に」というようなもうひとつ欲しかったところ。「バトルフィールド」をオチにもう一回引っ張り出す方が自然に感じます。
叩いてからの、説明突っ込み、という発明はすばらしいと思います。



三組目: とろサーモン

キャラクター:7
流れ:7
構成:6
笑い:8
世界観:7

85点

トリッキーとシュールの妙。技術力がむちゃくちゃ高いコンビだと思いました。このネタを自然な漫才に見せられるのがすごい。
ツッコミのネタ振りに対して、無気力なボケ。「やりたくないけどやってやる」というスタンスが面白い。
旅館のコントへ。
ハリガネムシのボケは破壊力が高くて個人的に好きです。「人と喋るの初めて!?」というツッコミも見事な処理。
「チャーハンが散らばっている」
「内風呂に入ってくる猿」
「いろいろありまして470円」
ボケのいい加減さが、非常に面白いです。
「続行!」
「一番怖いのはこの漫才にオチが無い」
「継続!」
仁王立ちで「ありがとうございました!」
というオチのトリッキーさは、評価が割れると思います。個人的には、ちょっと「はずし」に走りすぎたように見えました。



四組目: スーパーマラドーナ

キャラクター:7
流れ:7
構成:7
笑い:8
世界観:7

86点

はじめてのコンパかつ幹事というコント。
コントに入ってからはボケの独壇場で、その一挙一動に対してその都度説明ツッコミ(解説ツッコミ)を入れるというパターン。このフォーマットはツッコミと観客が同視点で楽しみやすいため、笑いを引き立てる仕組みとして優秀。
あるあるネタをベースにした外しボケ
「乾杯の音頭が上手くできない」
「王様ゲームのルールがわかってない」
「一人で罰ゲーム」
「うんこしながら作戦会議」
というイメージしやすいボケから、
異常な「古今東西ゲーム」へ繋げ、おかしな「一気のみコール」
→「田中さん面白ーい」「神を信じますか?」「あ゛あ゛あああ!」
ボケの激化が見事。
オチはどうしても強制終了感が見えてしまいました。
「お姉系の人がいて気まずい」が、筋振りとしてちょっと弱かったかも。



五組目: かまいたち

キャラクター:7
流れ:9
構成:8
笑い:9
世界観:6

89点

「怖い話を聞いてゾッとする瞬間が好き」→「怖い話をするとイラッとする」という掴み、かつルール設定が見事。ボケツッコミ二人の着眼点の違いで膨らませる漫才はしゃべくりの醍醐味だと思います。
「50年以上使っていない旧校舎」→「取り壊せ」
「呪われてる」→「爆破しろ」
ツッコミ側の提示する怖い話の穴に、ボケが屁理屈で逆にツッコミを入れ続ける。このテンポ感がたまりません。
「トイレの花子さんを実際にやってみた」というひとりコントは、シュール。説得力を笑いに変えるのは「あるあるネタ」に通じる構造。
「メリーさん」「口さけ女」と「卍」を発展させていくエスカレーションも綺麗。
オーソドックスな漫才を、抜群のかけあい技術を駆使して完成させた見事なネタだと思いました。



六組目: マヂカルラブリー

キャラクター:8
流れ:4
構成:5
笑い:6
世界観:5

79点

大好きなコンビだっただけに残念。準決勝抜けたときは思わず唸りました。
しかしながら、決勝ネタはあまりにも会場の空気と合わなすぎた。
「野田ミュージカル開催中だよー」の狂った掴みはすばらしいのですが、「変な客」のごり押しはどうしてもダレて見えてしまいます。
「めちゃくちゃ怒られた」というてこ入れは工夫が見えるのですが、上手く機能しなかったのも痛い。
「これまでの全部が、ミュージカルだったっていう……」「えー」「ことなのかなー」というオチに至る部分は空気ができあがっていないと、面白く見せるの不可能でしょう。
ボケの動きを笑いの軸にした漫才というのは希少価値が高いので、是非とも練り上げて完成させて欲しい。



七組目: さや香

キャラクター:7
流れ:7
構成:7
笑い:6
世界観:6

83点

ツッコミが「歌のお兄さんをやりたい」という古典的なコント入りではありますが、ボケが「歌のお兄さんを知らない」という部分で膨らませるのがフレッシュなところでしょう。
大人が対象年齢3歳の歌遊びに夢中になるというボケは、キャラクターの異常性ごり押しで勢いがありました。
「ボケ側が童謡にツッコミを入れる」というタイプのネタは、技術が無いとダレるので、そこをキャラクターで押し切ったのは見事。
しかしながら、童謡ネタの欠点、どうしてもネタが想定の範囲内に収まりすぎてしまう部分はカバーできていません。
この漫才、頂点が「両手を上に」「おもんな!」からの「幸せなら手を叩こう」に乗せられるという部分なのですが、そこの爆発力が弱く感じてしまう。
設定の範囲を超えるための仕組みかまいたちの「卍」のような広がり、あるいは、キャラの異常性を生かしたゆにばーすの「翼の折れたエンジェル」級の何か、があればもうひとつ伸びたと思います。



八組目: ミキ

キャラクター:7
流れ:8
構成:7
笑い:8
世界観:6

86点

「手紙を書きたいが、漢字が苦手」というネタ。
ワンアイデアをとにかく勢いとツッコミのリアクションで膨らませる、見ていて楽しい喧嘩漫才でした。
「薔薇」「髑髏」「憂鬱」→「手紙の内容が気になる」
ツッコミが空中に指で書いて見せようとするのをボケが「わからへん」と押さえて、「見て! 書いてるから!」
「こう、こう、こう!」
ツッコミの必死な様子は見ていて滑稽。わからずやのボケをたしなめるというタイプの中ではかなり激しい部類でしょう。
オチ前、「見失うな、見損なえ!」→「令」→「木ぃいい!」→「$$」「通貨間違えてんねん」「ペソペソ」
勢いがあって楽しいですが、ちょっと詰め込みすぎ?
「次そいつの下の名前」「いやもうええわ」のオチは、話を閉じていないため、ちょっと雑な印象を受けました。



九組目: 和牛

キャラクター:7
流れ:8
構成:9
笑い:9
世界観:7

90点

ウェディングプランナー。
前半すべてをフリにした見事な構成のコントでした。
「せり上がってくる入場」「入場曲がカラオケ音源しか無い」「伸びる棒のキャンドルサービス」「ジョブズスタイルの手紙読み上げ」
ありきたりなボケのはずなのに、後半強制実行することで面白さが一気に倍増する仕組み。
ボケは、前半ではおかしなウェディングプランナー役だったのが、後半では何も知らない新郎役に変わる。この切り替えは本当に美しく、笑い以上に感嘆が漏れました。
ツッコミが「ジョブズスタイル」をやけくそにやるくだりは白眉。
オチに至る疾走感が素晴らしかったです。



十組目: ジャルジャル

キャラクター:6
流れ:9
構成:9
笑い:9
世界観:8

91点

「変な校内放送を盛り上げる」という狂った掴み。
ルール説明からの展開の仕方が本当に上手いと思います。
序盤の変な笑いから、中盤、終盤とたたみかけ、爆発を引き出す構成が緻密ですばらしい。
「一個多いな(少ないな)」
「誰か来ましたよ」
「背筋伸びてるやん」
「いやファミレス行ってピンポン押して店員さん呼んだらハンバーグ定食頼んでパンorライスって聞かれてるやん」
このエスカレーションさながら、「ピンポイント」に体が反応してしまうというクッションも効果的。
「ピンポンパンポン」から、フレッシュな発想でもって、ミスの許されない難易度のネタを作り、さらにそれを完成させた形で披露する技量に感服しました。



最終決戦一組目: とろサーモン

キャラクター:6
流れ:6
構成:6
笑い:7
世界観:7

82点

「喧嘩したくないなら流れに身を任せろ」という掴み。
肩へばりついて後ろに下がる。耳元で「ごめんなさいね」と囁く、というボケは異様でおもしろい。
そこから「石焼き芋屋」の漫才コントへ。
しかしながら、漫才コントに入る動機は説明不足に感じてしまいました。
なぜ「石焼き芋屋」を二人でやる必要があるのか? そんな疑問が少しでも頭をかすめようものなら、笑えなくなってしまうのが残念。
あまりにも端折りすぎではないか?
ボケを羅列するためのストーリーテリングに見え、不自然に感じてしまいました。
「芋神様に感謝しましょう」のくだりは、異常性が全面に出て、本来もっと大きな爆発を生んでも良いところ。序盤の「石焼き芋屋をやる」という動機付けをしっかりやって、丁寧に漫才コントをこなしておかないと効果半減なのではないか。ただ「変なこと」が乱雑に並んだだけのボケに見えてしまい、ネタの整理ができていないという印象を受けてしまいました。



最終決戦二組目: ミキ

キャラクター:7
流れ:7
構成:6
笑い:7
世界観:5

82点

「映画が好き」→「スターウォーズを知らない」→「金曜の夜はいつも外食」→「わしもや」
の掴みは兄弟漫才ならではで楽しい。
曲がなんでも「暴れん坊将軍」になってしまうというボケは面白いが、元ネタありきなところは評価しづらい。
オチをああするなら、中盤で映画ネタをやりすぎだと思います。雑多な後味が残りました。



最終決戦三組目: 和牛

キャラクター:7
流れ:7
構成:8
笑い:8
世界観:7

87点

「旅館の仲居さんが苦手」というコント。
ボケを二周させて笑いを増幅させる構造は一本目と同じ。
若干二周目の展開が弱いとは言え、ボケのめんどくさいキャラが全面に出ているネタ運びはとても楽しかったです。
「泡多いな」「黙れ」の不意打ちは思わず笑ってしまいました。
ツッコミのぼやきや言葉のチョイスも見事。





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